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現状と実績

重粒子線治療の現状
重粒子線治療を組み込んだ、より高度ながん医療体制の構築をめざす

地域がん医療のモデルをめざす、群馬大学の普及型重粒子線治療装置

放射線医学総合研究所のがん治療装置

わが国最新の重粒子線治療装置として、普及型小型医療用加速器を用いた重粒子線治療装置が群馬大学に設置され、2010年より治療を開始しました。わが国の重粒子線治療装置としては放射線医学総合研究所、兵庫県立粒子線医療センターに次ぐ3番目の装置です。

この装置は、放射線医学総合研究所が主体となって研究開発を進めてきた、普及小型重粒子線照射装置の技術実証第1号機です。建屋は地上2階、地下1階で、設置面積は約2,960㎡(おおよそ50m×60m)。放射線医学総合研究所のがん治療装置(HIMAC)の半分以下のコンパクトな施設です。
普及型として建設されたこの施設は、将来、重粒子線照射施設が全国の諸地域に配置された場合のモデルとなることが期待されています。群馬大学では、県内医療機関と連携してこの施設を効果的に活用し、群馬医療圏に高度な総合的がん医療体制を構築することをめざしています。

国内の重粒子線照射施設の設置面積
施設 サイズ 比率(%)
放射線医学総合研究所(HIMAC) 120m×65m 100
兵庫県立粒子線医療センター 95m×80m 96
群馬大学重粒子線照射施設 60m×50m 38

重粒子線治療の適応拡大も視野にいれた臨床研究

また、群馬大学の重粒子線治療装置の設置は、大学としては全国で初の事例です。先端的総合病院である医学部附属病院を基盤に、重粒子線治療が提供されることにより、より充実した総合的がん医療体制を目指すものです。
さらに、大学病院本来の強みでもある、重粒子線治療と他の治療法との比較臨床試験や、併用治療法研究などの応用研究への取り組みも可能となり、術後の遠隔転移対策やさらなる生存率向上など、がんの治療成績向上につながる臨床研究の進展が期待されます。

なお、群馬大学では、普及型重粒子線治療装置を活用した高精度の炭素イオンマイクロサージェリー技術の開発により、重粒子線治療の適応を微小がん、脳下垂体腫瘍などの良性腫瘍、脳血管疾患へと拡大するための独創的研究も進めています。

スキャニング照射法

3次元スキャニング照射法

2011年5月から放医研で臨床試験が開始された「3次元スキャニング照射法による重粒子線治療法」が、2016年2月から神奈川県立がんセンター(i-ROCK)で開始されました。この照射法は、呼吸に伴って動くがん病巣を、細い炭素ビームで一筆書きのように塗りつぶす照射法です。複雑な形の病巣でも照射可能となり、病巣への線量集中性の向上及び副作用の低減を実現しました。この事に依り、治療成績やQOLの向上が期待されます。

重粒子線回転ガントリー

回転ガントリーは患者さんが治療台に横たわったままで、患者さんを動かすことなく、照射装置が勝手に動いて自由な角度で病巣に適切な重粒子線を照射することができます。患者さんの身体的負担のさらなる軽減や治療時間の短縮、より一層の治療効果の向上が期待されます。
回転ガントリーは、陽子線施設では標準装備ですが、重粒子線は質量が大きいため、偏向電磁石が非常に大型化してしまいます。
QST病院(旧放射線医学総合研究所病院)では超伝導電磁石を採用することで設備の小型化に成功し、2017年5月から治療に利用しています。

【参考資料】量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所、群馬大学