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現状と実績

重粒子線治療の実績
短期照射でもがんの局所制御、生存率向上が期待できる

【治療成績】重粒子線治療後の5年生存率

1994年から開始された放射線医学総合研究所「HIMAC」での治療結果として、5年生存率を見ていただければ、良好な成績が得られているのがわかります。これらは初期段階の臨床試験(PhaseⅠ/Ⅱ)で、主に手術不能ながん、進行・再発がんを対象にしたことを考慮すると、きわめて良好な治療成績と言えます。

【治療成績】重粒子線治療が有効な組織型

以下のような組織型のがんへの有効性が確認されています。

  • ・腺がん系(腺がん、腺様嚢胞がん、肝細胞がん)
  • ・肉腫系腫瘍(悪性黒色腫、骨・軟部肉腫など)

【治療期間】短期小分割照射の検証が進む

重粒子線治療は、線量集中性が高いため、照射回数が少なくても治療効果を得やすいことから、さまざまながん種における短期小分割照射が検討されています。現在のところ、前立腺がん、子宮がん(20回/3~5週照射:目安)、頭頸部がん、骨・軟部腫瘍(16回/4週照射:目安)については、一般の放射線医療に比べて約2分の1の短期照射が可能となりました。

【有害反応】重篤な有害反応は認められない

日本での重粒子線治療は1994年より開始されましたが、最も初期の第Ⅰ/Ⅱ相試験において、高線量で治療された前立腺がん、子宮頸がん、食道がんの症例のなかに、消化管の重篤な副作用が出現した症例があります。その後の臨床研究により、安全線量と照射方法が改善された結果、現在では、同様の副作用は認められなくなりました。

放医研におけるこれまでの研究結果
(期間:1994(平成6)年6 月~ 2013(平成25)年2 月)
プロトコル 対象 照射法(回/週) 患者数 3年局所
制御率
生存率 備考
3年 5年
頭頸部-1+2 I/II 局所進行がん 49~70/16~18/4~6 34 81% 48% 37% *4年生存率
頭頸部-3
(9602)
II 局所進行がん 57.6/16/4 284 73% 57% 43%
    -腺様嚢胞がん   85 89% 77% 67%
    -腺がん   37 81% 63% 47%
頭頸部-4   -悪性黒色腫   93 86% 58% 44%
頭頸部-5 I/II -その他   69 50% 42% 33%
    肉腫 70.4/16/4 23 100% 61% 41%*
    悪性黒色腫 57.6/16/4 63 76% 56% 49%*
    -炭素線+化学療法   54 83% 59% 59%*
頭蓋底/傍頸髄 I/II 頭蓋底/傍頸髄 48.0~60.8/16/4 42 93% 94% 88%
    -脊索腫   25 89% 100% 88%
肺-1(9303) I/II I期(肺野型) 59.4~95.4/18/6 47 65% 64% 41%(61%)* ()*原病による生存率
**線量増加検討中
肺-2(9701) I/II I期(肺野型) 72.0~79.2/9/3 34 91% 55% 40%(58%)*
肺-3(9802) II I期(肺野型) 72.0/9/3 50 95% 66% 50%(76%)*
肺-4(0001) I/II I期(肺野型) 52.8~60.0/4/1 79 90% 62% 36%(69%)*
肺-3+4 - I期(肺野型) 4回分割及び
9回分割照射
129 93% 64% 43%(73%)*
    -IA(≦3㎝)   71 99% 78% 55%(88%)*
    -IB(>3㎝)   58 85% 47% 29%(51%)*
肺-5(0201)** I/II I期(肺野型) 36~50Gy(1回照射) 151 83% 76% 55%
肺-6(9801) I/II I期(肺門型) 57.6~61.2/9/3 23 91% 64% 31%(68%)
肺-7(9903) I/II 局所進行がん 68~76/16/4 37 88% 38% 38%(56%)
肝-1 I/II T2~4M0N0 49.5~79.5/15/5 24(24) 81% 50% 25% ()病変数
肝-2 I/II T2~4M0N0 48~69.6/4~12/1~3 82(86) 87% 48% 26%
肝-3 II T2~4M0N0 52.8/4/1 44(47) 96% 58% 35%
肝-2+3 - 52.8Gy/4回治療 52.8/4/1 61(69) 94% 57% 34%
    52.8Gy/4回治療
(単発・3~5cm)
52.8/4/1 20(22) 91% 75% 70%
肝-4 I/II T2~4M0N0 32.0~38.8/2 fr/2 days 36(36) 84% 77% -
前立腺-1 I/II B2~C 54~72/20/5 35 97% 94% 89% 5年無再発生存率91%
前立腺-2 I/II A2~C 60~66/20/5 61 100% 97% 90% 5年無再発生存率78%
前立腺-3 II T1C~C 66/20/5 365 99% 94% 92% 5年無再発生存率90%
前立腺-2+3 全例 A2~C 66.0~63/20/5
57.6/16/4
51.6/12/3
1704 99% 97% 96% 5年無再発生存率91%
    -低リスク   226 98% 97% 97% 5年無再発生存率92%
    -中リスク   678 100% 98% 98% 5年無再発生存率92%
    -高リスク   800 100% 95% 94% 5年無再発生存率87%
子宮-1 I/II III~IVa(扁平上皮がん) 53~72/24/6 30 49% 40% 37%
子宮-2+3 I/II II~IVa(扁平上皮がん) 64~72/20~24/5 36 72% 60% 60%
子宮腺がん I/II II~IVa(腺がん) 62.4~71.2/20/5 39 55% 55% 38%
骨・軟部-1 I/II 切除不可能 52.8~73.6/16/4 57 63% 47% 36% 骨盤及び傍脊椎を含む
骨・軟部-2 II 切除不可能 70.4~73.6/16/4 650 78% 70% 58%
骨・軟部-1+2 - 骨肉腫 52.8~73.6/16/4 78 - - 33%
    脊索腫 52.8~73.6/16/4 214 92% 93% 80%
直腸-1 I/II 術後骨盤内再発 67.2~73.6/16/4 229 90% 67% 45%
膵:術前-1 I/II 切除可能 All 44.8~48.0/16/4 22 - 23.8%(36.3)* *2年生存率
()切除例
術前-2 I/II 切除可能 All 30.0~36.8/8/2 35 89% 56% 40%
局所進行 I/II 切除不可能 All 38.4~55.2/12/3 82 36% 36% 36%*
食道:術前
化療併用
I/II Stage Ⅱ・Ⅲ(T4除く) 33.6~35.2/8/2 5 - 100%* *2年生存率
単独根治 I/II T1bN0 43.2~50.4/12/3 29 - 84% 78%

【参考資料】 辻井博彦ほか,「放射線科学」:2007;50(7):4-19.

プロトコール名 登録
番号
適応、照射法(回/週または日) 患者数 3年
局所
制御率
生存率 備考
3年 5年
頭頚部腫瘍Ⅲ
(9602) 16 回/4 週 520 80% 71% 57% 先進医療
2003~
頭頚部Ⅳ
(骨軟部)
(0006) Ⅰ/Ⅱ 16 回/4 週 53 84% 72% 56% 先進医療
2008~
2016.4~保険
頭頚部Ⅴ
(悪性黒色腫)
(0007) 16 回/4 週
化学療法併用
140 84% 65% 51% 先進医療
2003~
非小細胞肺癌Ⅲ
(9801) Ⅰ/Ⅱ 中心型
9 回/3 週
23 91% 64% 31% 先進医療
2003~
非小細胞肺癌Ⅴ
(9903) Ⅰ/Ⅱ 局所進行型
16 回/4 週
37 93% 38% 32% 先進医療
2003~
非小細胞肺癌Ⅵ
(0001) Ⅰ/Ⅱ 肺野末梢型
4 回/1 週
79 90% 62% 36%
非小細胞肺癌Ⅷ
(0201) Ⅰ/Ⅱ 肺野型(48Gy-50Gy)
1 回/1 日
20 95% 85% 69% 先進医療
2012~
非小細胞肺癌Ⅸ
(0503) Ⅰ/Ⅱ 肺門・肺門近接型
12 回/3 週
18 100% 60% 34%
肝細胞癌
(9401) Ⅰ/Ⅱ 15 回/5 週 24 75% 50% 19%
肝細胞癌Ⅱ
(9603) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週→8 回/2 週→4 回/1 週 82 82% 45% 25%
肝細胞癌Ⅲ
(0004) 4 回/1 週 44 92% 48% 24%
肝細胞癌Ⅳ
(0202) Ⅰ/Ⅱ 2 回/2 日 144 81% 61% 37% 先進医療
2006~
転移性肝癌
(0506) Ⅰ/Ⅱ 1 回/1 日 28 51% 80% 53% MST65M
前立腺癌
(9402) Ⅰ/Ⅱ 重粒子線+ホルモン 35 97% 94% 89%
前立腺癌Ⅱ
(9703) Ⅰ/Ⅱ 重粒子線単独・及び重粒子線+ ホルモン 61 100% 97% 90%
前立腺癌Ⅲ
(9904) 20 回/5 週→16 回/4 週→12 回/3 週 1704 99% 97% 96% 先進医療
2003~
前立腺癌Ⅴ
(1002) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週 457 100% 98%   先進医療
2013~
腎癌Ⅰ
(1203) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週 7       開始した
ばかり
子宮頚癌
(9403) Ⅰ/Ⅱ 均等分割 30 49% 40% 37%
子宮頚癌Ⅱ (9702) Ⅰ/Ⅱ 原発部のみ線量増加 36 72% 60% 60%
子宮頚癌Ⅲ (9902) Ⅰ/Ⅱ 20 回/5 週 先進医療
2014~
子宮癌Ⅳ (0508) Ⅰ/Ⅱ 20 回/5 週 26 84% 68% 68% 先進医療
2012~
子宮癌Ⅵ (1302) Ⅰ/Ⅱ 20 回/5 週化学療法併用 22       臨床試験2013.6~
先進医療2016.4~
子宮腺癌 (9704) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週+ブースト8 回/2 週 67 55% 55% 38% 先進医療
2012~
子宮腺癌Ⅱ (1001) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週+ブースト8 回/2 週 19       先進医療
2014~
乳腺Ⅰ (1301) Ⅰ/Ⅱ 4 回/1 週 3       臨床試験
2013~
骨・軟部腫瘍 (9501) Ⅰ/Ⅱ 16 回/4 週 57 63% 47% 36%
骨・軟部腫瘍Ⅱ (9901) 16 回/4 週 650 78% 70% 58% 先進医療
2003 ~
食道癌
(術前)
(9502) Ⅰ/Ⅱ 20 回/5 週 7   *14%   *2年生存率
食道癌
(根治)
(9503) Ⅰ/Ⅱ 24 回/6 週 14   *7%   *2年生存率
食道癌
(術後)
(9905) Ⅰ/Ⅱ 切除非対応12 回/3 週 2      
食道癌
(術前短期)
(0301) Ⅰ/Ⅱ 8 回/2 週 31   74% 59%
食道化療併用
術前
(1206) Ⅰ/Ⅱ 8 回/2 週 化学療法併用 8     *100% 2012.9~
*2年生存率
Ⅰ期食道根治 (0701) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週 30 75% 84% 78%
直腸癌術後
再発
(0003) Ⅰ/Ⅱ 16 回/4 週 229 90% 67% 45% 先進医療
2004~
頭蓋底腫瘍 (9601) Ⅰ/Ⅱ 16 回/4 週 90 92% 92% 82% 一部保険
2016.4~
膵癌Ⅰ
(術前)
(9906) Ⅰ/Ⅱ 16 回/4 週 22 *86% *20%   *2年制御・生存率
膵癌Ⅱ
(術前)
(0203) Ⅰ/Ⅱ 8 回/2週 35 89% 56% 40% 先進医療
2011~
膵癌Ⅴ
(術前)
(1205) 8 回/2週 化学療法併用 9       2012.9~
膵癌Ⅲ (0204) Ⅰ/Ⅱ 局所進行12 回/3 週 47 *70% *11%   *2年制御・生存率
膵癌Ⅳ
(化療併用根治)
(0513) Ⅰ/Ⅱ 局所進行12 回/3 週 76 36% 34%   先進医療
2012~
眼腫瘍Ⅱ (0002)+
(0002(2))
Ⅰ/Ⅱ 重粒子線5 回/8 日 175 95% 90% 82% 先進医療
2004~
涙腺Ⅰ (0102) Ⅰ/Ⅱ 12 回/3 週 31 72% 79% 70% 先進医療
2011~

○ 先進医療として実施しているプロトコール

【参考資料】 辻井博彦ほか,「放射線科学」:2007;50(7):4-19.「放医研におけるこれまでの研究結果」(重粒子線がん治療のこれまでとこれから:HIMAC20周年記念講演会)